「白龍の少女」 やや冷たさの残る石壁に凭れたままの少女は、虚ろに宙を眺めていた。 特に整えられてもいないその室内は薄暗く、急ごしらえのベッドと小さなテーブルがあるだけだ。 「こんな部屋で良いのか?」 「……」 彼女の真向かいに立つそんなセトの問い掛けに、少女は俯き何も答えない。 決して口がきけない訳ではない。 あの時、少女は村人と言葉を交わしていたのだから。 この部屋も、少女の希望で出来るだけ質素な物を侍女が用意をしたと言っていたのだから。 「…オレとは会話もしたくはない、という訳か…」 セトの嫌味とも取れる言葉に、少女は唇を噛み締め顔を横へと背けた。 「まぁ構わん。それよりもここでゆっくりと養生するがいい、お前には…それだけの価値がある」 「…価値…?」 『価値』…そんな単語に少女が反応を示し、セトを見上げた。 「白き龍を知っているか?」 少女はゆっくりと首を横に振り、再び俯いた。 「だろうな。己の中の精霊を己で知っている者は少ない」 湯殿に浸かりすっかり埃を落としきった少女の髪からは、微かに香油の残り香が香る。 「…乳香か…随分と良い香油を使ったものだ」 セトはその髪を一房手に取り、そっと唇に押し当てた。 そんなセトの行動に驚いた少女は、まじまじとセトを見つめた。 その蒼い瞳には、涙が滲んでいるように見えた。 女の涙にはある種の媚薬が含まれている。 それがセトの中の性欲と支配欲に火を灯してしまうのに、理由や時間は必要なかった。 『抱きたい』そう思ってしまっただけの事…。 少女の細い腰に腕を回し、セトは力を込めその身体を抱き締めた。 「…神官…さま…!」 セトの腕の中で小さく抵抗をしながら、少女はセトへと呼び掛けた。 そんな声はセトの耳へは一切届かない。 薄い布越しに伝わる少女の体温や、小刻みに震える身体、そして胸にかかる吐息がセトを駆り立てる。 気付けばその唇を塞ぎ、少女の中へ己を突き立てたいという欲望だけが膨れ上がる。 胸の中で暴れる少女の拳すら、今のセトへは何の意味も成さない。 やわらかな唇を探り、歯列を割り込みながら舌を絡める。 「…ぁ……はぁ…」 少女は小さな声を漏らし、ぐったりとセトへ身体を預けた。 深く唇を合わせながら、セトは少女を抱き上げるとベッドへと向かった。 少女の上へと覆い被さりながら、衣服の裾から手を忍び込ませる。 滑らかな膝を撫で上げ、その手を更に上へと進める。 「…いけませ…ん……神官…さま…」 セトの手を制止しようと少女は手を重ねるも、力が入らない為、唯の添え物となってしまう。 「…悪いようにはせん…」 耳元で発せられるセトの低い声にゾクリとした物を感じ、少女の肌に薄らと鳥肌が立つ。 内腿に触れたセトの指先が擽るように蠢き、少女の柔らかな唇からは短い吐息が幾度となく吐き出される。 まだ肝心な部分には全く触れてはいないのに、明らかに少女は喘いでいた。 頬を朱に染め、目尻には薄ら光ると涙が見えた。 セトの手が陰部を素通りし、脇腹を撫で上げながら少女の衣類の前を肌蹴ていく。 さほど豊かではないが充分な張りを持った白い乳房が露になる。 その先端の乳首は可憐な桃色をしており、セトはそこを指先でそっと摘み上げた。 「あっ…!」 途端にそれまで抑えていた声が漏れてしまい、あまりに過敏な反応にセトの眉間に、一瞬皺が寄る。 少女は恥ずかしさからか口を自分の手で塞いだ。 「生娘ではないのか…?」 セトの問い掛けに少女はゆっくりと首を縦に振った。 「…食べる物に困り…何度か身体を売った事が……」 「そうか…」 少女が『価値』と言う単語に反応したのは、過去の売春に対してのものだった。 「神官さま…私の身体には……価値があるのですか?」 潤んだ瞳で見つめられ、セトの胸の奥がズキンと痛んだ。 「お前の中の精霊も…お前も…一国の運命を変えるほどの価値がある。それは間違いない」 形の良い乳房を愛撫しながらセトは少女を見つめ返した。 「あ…神官さま……!」 徐々に押し寄せる快楽が少女の思考を奪っていく。 「オレの運命をも変えてしまうほどだ…」 裾を割り、少女の身体が待ち焦がれた秘部へとセトの指が伸びる。 ほんの少しの愛撫だというのに既にそこはしっとりと潤い、何かを待ち構えているかのように思えた。 中指の先を割り込ませ愛液を零し始めている部分をそっと擦り上げる。 「…やっ……は…ぁ……」 セトの肩に顔をうずめ、喘ぎ声を漏らす唇は濡れて紅く、酷く淫らに見えた。 そのまま指を中へと沈め、親指の先でその前の突起へと触れると、少女の身体はピクンと跳ね、 セトへとしがみ付く。 構わず、そのまま挿入した指を動かし内壁を擦り上げると指の節が少女を刺激し、 更に愛液は流れ出す。 それを掬い取りながら突起も撫でるように愛撫をする。 「は…んっ!…しんか…ん…さま……」 寄せる快楽の波を逃すまいと、少女はセトの指に身体を摺り寄せる。 充分過ぎるほどに潤ったところへ、セトは己の猛った性器を押し当てた。 「…あっ!…や…ん……!」 少女はセトをずぶずぶと飲み込み、締め付ける。 何度も強弱をつけられ貫かれる度に、少女の喘ぎ声は淫靡さを増し、知らず知らずのうちに 自ら腰を動かしていた。 膣の最奥までセトで満たされ、その狂おしいほどの悦楽が少女を蝕む。 初めからそこへ治まるべき物であるかのように、依然として己を誇示するセトもぬるぬるとした内壁を ひたすらに擦り続けながら、一時の快楽に身を委ねた。 「…達しても…構わないぞ…」 セトの擦れた声が耳に心地良かった。 この人にならば全てを委ねても構わない…少女の中にそんな気持ちが芽生えていた。 「セト…さま……!イ…く…!」 少女の身体が硬直し、セトを離すまいと一層強く締め付けた後、内部がびくびくと痙攣した。 「くっ……ぅ…!」 セトも同時に少女の内部へと熱い精を迸らせた。 「まだ…名前を聞いていなかったな…」 情事の後の気だるさからか、半身すら起こさずにセトが呟いた。 「明日…教えて差し上げます…セトさま…」 窓から覗く月の光だけが二人を見つめていた。 <完> |
2004年10月8日うp